アレクサンダー・ドゥギン 「イスラエルとイランの戦争について」 2025年6月26日
ポストモダニズムとメシア的黙示録:アレクサンダー・ドゥギン、イスラエルとイランの戦争について アレクサンダー・ドゥギン(インターナショナル) 6月26日2025年 ドゥギンは、米国、イスラエル、イランのイデオロギーが現在の危機への対応にどのように影響を与えるかを分析し、最近の停戦が一時的なものとなる可能性が高い理由を説明しています。 現代地政学の深層:ポストモダニズムと終末論的イデオロギーが織りなす世界 現代の地政学は、従来の分析手法では捉えきれないほど複雑な様相を呈しています。 特にイスラエルとイランの紛争は、その最たる例と言えるでしょう。 アレクサンドル・ドゥーギン教授は、この複雑な世界情勢を理解するために、ポストモダニズム、終末論的イデオロギー、そして「量子地政学」という革新的な概念を導入しています。 「シュレーディンガーの停戦」:曖昧な現代紛争の象徴 ドゥーギン教授は、イスラエルとイラン間の現在の状況を「シュレーディンガーの停戦」と表現しています。これは、停戦が宣言されながらもミサイル攻撃の報告が続く、不確実で曖昧な状態を指します。 この表現は、現代の紛争が従来の戦争や平和の明確な定義に当てはまらないことを示唆しており、私たちはもはや明確な二元論では世界を理解できないという現実を突きつけられます。 第三次世界大戦の常態化と核のタブーの希薄化 ドゥーギン教授は、第三次世界大戦がすでに始まっており、それがまだ終わっていないという衝撃的な主張を展開しています。 彼は、イランの核施設への直接攻撃が、核兵器の使用を避けるという従来のレッドラインを根本的に侵害するものであると指摘。 この行動は、核戦争の可能性を常態化させ、核兵器がもはや使用できないというタブーが薄れてきていることを示唆しています。 人類は、核爆発や核兵器の直接使用の可能性を受け入れ始めているという彼の見解は、現代社会が直面する危険な現実を浮き彫りにします。 量子地政学とポストモダニズム:不確実な現実の解読 現代の戦争を理解するためには、従来の論理的な戦争と平和の概念では不十分であるとドゥーギン教授は提唱します。 彼は「量子力学の原理に基づいた戦争」という新しい視点、すなわち「量子地政学」の必要性を訴えます。 この概念では、事実は不確実であり、各関係者が独自の物語を提示し、現実と願望、感情が入り混じっているとされます。 これは、現実が単一の客観的なものではなく、解釈や願望によって形成されるポストモダンの戦争形態を反映しています。 外交政策に浸透するポストモダニズム ドゥーギン教授は、ポストモダニズムが外交政策や戦争にどのように浸透したかを詳細に説明しています。1990年代初頭にアメリカ軍で登場した「ネットワーク戦争」の概念は、ポストモダニズム哲学に直接言及しており、指揮官が直接的な命令ではなく「願望」や「意図」を伝え、部下がそれを解釈して行動するという特徴があります。 また、情報戦の重要性もポストモダニズムの特徴として挙げられます。 情報を操作し、敵を欺くことで、現実そのものよりも言説やテキストが重要視されるという考え方です。ドローン、人工知能、情報操作の使用は、従来の戦略の単なる継続ではなく、現代の戦争に組み込まれたポストモダンの性質を示しているとドゥーギン教授は主張します。 ドナルド・トランプのポストモダニスト的アプローチ ドナルド・トランプは、ポストモダニスト的な外交政策の好例であるとドゥーギン教授は見ています。 トランプの政治スタイルは、「加速の原理」または「ドロモクラシー(速度の支配)」によって特徴づけられます。彼は迅速に過激な主張を行い、すぐに撤回したり、真逆の主張をしたりします。 これは、長期的な戦略よりも短期的な物語や、過去と未来が混同されるような時間の操作に基づいています。トランプはイデオロギーや結果にこだわらず、常に「波に乗る」ことで状況に適応する「サーファー」のようだと描写されています。 新しい存在論と仮想現実への移行 ポストモダニズムは、単なる見せかけや現実の否定ではなく、「現実が存在しない新しい存在論」を提示しているとドゥーギン教授は述べています。 人工知能は、テキストのみを扱い、現実そのものを存在しないとみなすことで、このポストモダンの哲学を体現しています。 ドゥーギン教授は、人類が「仮想現実」へ移行していると主張し、これを「シンギュラリティの瞬間」と捉えています。 この新しい現実では、真実と虚偽の区別がなくなり、すべてが「シュレーディンガーの猫」の存在論のように「かもしれないし、そうでないかもしれない」という状態になります。 イスラエルとイランのイデオロギー的動機 ドゥーギン教授は、イスラエルとイランの行動が深いイデオロギー的、宗教的信念によって推進されていると分析しています。
- シオニズムのメシアニズム:
伝統的なユダヤ教では、メシアが到来した後にユダヤ人が約束の地に戻り、第三神殿が建てられると信じられています。しかし、シオニストは「メシアの遅延」を宣言し、メシアを待たずに自ら行動を起こし、イスラエル国家を樹立しました。 ドゥーギン教授は、ベンヤミン・ネタニヤフが「自分がメシアであるかのように行動している」と述べています。ネタニヤフの行動は、メタフィジックス、終末論、政治の組み合わせに基づいた、神の戦い(ヨハネの戦い)であると捉えられています。ガザ、レバノン、シリア、イランへの攻撃は、すべてこの宗教的、メシアニズム的動機から説明できるとされます。
- シーア派の終末論:
イランのシーア派もまた、同様の終末論的信念を持っています。1979年のホメイニ革命後、シーア派の世界が主権と独立を回復すれば、終末の時が到来し、隠れたイマームであるマフディが現れて偽善者ダッジャール(西洋文明とシオニスト)と戦うと信じられています。 このため、イランにとってイスラエルは、単なる政治的敵ではなく、形而上学的な絶対的敵であるとされています。 キリスト教シオニズムとロシア正教の視点 ドゥーギン教授は、アメリカのキリスト教シオニストがイスラエルを支持する宗教的義務があると考えていることに対し、ロシア正教会の立場を説明しています。 正教会では、イエス・キリストの到来後、選民としてのユダヤ人の地位はキリスト教会に移ったとされており、キリストを受け入れないユダヤ人は「呪われている」と見なされています。 アメリカのプロテスタントにおけるキリスト教シオニズムは、17世紀に英国イスラエル主義から派生した比較的「新しい現象」であると指摘されています。 彼らは、スコフィールド聖書などの解釈に基づいて、ユダヤのメシアがキリスト教徒にとっても真のメシアであると信じ、ユダヤのメシア(シオニスト)のためにすべてを犠牲にする義務があると主張しています。 ドゥーギン教授は、この宗派の終末論では、ロシアが終末のシナリオにおいてイスラエルの敵側に立つ「ゴグの国」として描かれていることを指摘し、これがなぜネオコンがロシアやイランとの戦争を望むのかを説明していると述べています。 結論 ドゥーギン教授の分析は、現代の地政学的紛争が従来の合理的な枠組みでは理解できないことを示唆しています。ポストモダニズム、量子地政学、そして根深い宗教的・終末論的イデオロギーが複雑に絡み合い、それが現在の不安定な世界情勢を形成しているというのです。これは、世界を理解するための新しい分析ツールの必要性を強調するものです。
