アレクサンダー・ドゥーギン:「ウクライナ紛争はグローバリストが引き起こした。ロシアが彼らの邪魔をしているのだ」 

Dur: 00:58:47 Download: HD LD mp3

思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏と元エクアドル大統領ラファエル・コレア氏の対談は、現在の地政学的な状況、イデオロギー、そして世界秩序の未来について深く掘り下げたものです。

アレクサンドル・ドゥーギン氏が語る「歴史の終わり」「文明の衝突」、そして「第四の政治理論」
この対談では、ロシアの著名な哲学者で政治学者であるアレクサンドル・ドゥーギン氏が、元エクアドル大統領ラファエル・コレア氏と共に、グローバルな政治哲学の根幹、ウクライナ紛争、そしてラテンアメリカの地政学的な位置付けについて議論しました。
1. 「歴史の終わり」論の再解釈と文明国家の台頭
対談は、冷戦終結後にフランシス・フクヤマが提唱した「歴史の終わり」論から始まります。
• フクヤマの誤り: ドゥーギン氏は、フクヤマがヘーゲルの哲学を基にしたアレクサンドル・コジェーヴの思想を不完全に解釈したと指摘します。ヘーゲルにとって「歴史の終わり」は国家の創設でしたが、コジェーヴとフクヤマはそれを市民社会、自由民主主義、市場経済の段階で終わらせてしまいました。
• ヘーゲルとハンティントンの正当性: ドゥーギン氏は、ヘーゲルはメガ国家の出現とその競争を予見していたと主張し、フクヤマの予測は失敗したと見なします。その代わりに、サミュエル・ハンティントンが提唱した**「文明の衝突」**論における文明国家(ロシア正教、中国、インド、ラテンアメリカなど)の台頭が、現在の多極的な世界(BRICSなど)の状況をより正確に表しているとして、ハンティントンとヘーゲルが正しかったと論じます。
2. 「第四の政治理論」:脱植民地化された政治哲学
ドゥーギン氏は、自身の中心的な思想である**「第四の政治理論」**を説明します。これは、20世紀を支配した主要な3つのイデオロギー(リベラリズム、共産主義、ファシズム)の枠組みを超え、文明のアイデンティティに基づいた政治システムを構築することを提唱するものです。
• リベラリズムへの批判: リベラリズムは現在最も支配的なイデオロギーですが、ドゥーギン氏はこれを「植民地的な政治学」と見なし、西洋の価値観(民主主義、人権など)を普遍的なものとして押し付ける「文化的植民地化」だと批判します。
• 文明に根ざしたシステム: 政治体制は普遍的であるべきではなく、それぞれの文明(中国の儒教、ロシアの正教と帝国、インドのダルマなど)固有の基盤から生まれるべきだと主張します。
• ラテンアメリカへの提案: ラテンアメリカに対しても、西洋を模倣するのではなく、独自の文化的前提と権力構造(ペロンやチャベスの運動が求めたような)を持つ「第四の政治理論」を構築するよう促します。
3. ウクライナ紛争の構造的要因とロシアの立場
ドゥーギン氏は、ウクライナ紛争を単なる二国間の対立ではなく、ロシアと「集団的西洋」との間の文明の戦争として捉えます。
• 紛争の根本原因: ロシアがイデオロギーを放棄した後も、西洋(NATO)が拡張し続けたことで、ロシアは西洋文明に受け入れられませんでした。ウクライナが反ロシア的なナショナリズムの拠点となり、NATO加盟へと舵を切ったことが、この戦争を引き起こした「挑発」であると見なしています。
• 中立性の裏切り: ウクライナは当初、主権を維持するために中立であるべきでしたが、2014年以降にその信頼が裏切られたとしています。
• 長期化の予測: ドゥーギン氏は、ウクライナ側が交渉の意思を見せず、これまでの約束を破棄してきた経緯から、ロシアはもはやウクライナの約束を信用できないと述べます。したがって、この戦争は「最終的な勝利」まで長く続く可能性があり、ウクライナ全土の「解放」が唯一の解決策だと主張します。
4. トランプ政権と多極化世界の展望
• グローバリスト vs. MAGA: ドゥーギン氏は、西洋のグローバリストたちがロシアを破壊し、単一の世界政府プロジェクトを推進しようとしているのに対し、トランプ氏が率いる**「MAGA(Make America Great Again)」**運動は、孤立主義、伝統的価値観を共有しており、ロシアとの建設的な関係や多極的な世界を許容する可能性があると分析します。
• トランプの矛盾: しかし、トランプ氏自身は、MAGA運動とネオコン(ネオ保守主義)の間で揺れ動いているため、ロシアとの戦略的パートナーシップの構築は困難であるとも指摘しています。
5. ラテンアメリカの地政学的な未来
• 新しい文明: ドゥーギン氏は、ラテンアメリカをハンティントンが指摘したように「新しい文明」と見なし、連合することが将来の主権を確立するための唯一の道であると強調します。
• ロシアとの連携: ラテンアメリカの独自性(カトリシズム、先住民族の伝統、クリオーリョ文化)が、自由主義的な個人主義よりも社会正義の概念を持つ左派の思想に近い可能性があるとし、ロシアとユーラシア文明は、ラテンアメリカとの間で最も緊密な関係を築くことができると期待を表明しました。